この記事の要点
- 体言止めは「です・ます調」の文章よりも、「だ・である調」の文章のほうが使われている
- うまく体言止めを使えれば、その先を読み手に想像させることも余韻を加えることもできる
- 文脈を意識せずに使うと、文章が軽く感じられたり、読み手にストレスを与えてしまったりする
文章を書く仕事をしている人にとっては当たり前のテクニックといえる「体言止め」ですが、うまく使えていますか?
使い方によっては効果的な「体言止め」も、間違った使い方をすれば逆効果になってしまうことがあります。
「体言止め」の効果を最大限に活かす使い方を知って、他のライターと差がつくライティングテクニックを身につけましょう。
体言止めの定義
体言止めの使い方を解説する前に、まずは体言止めの定義を確認しておきましょう。
三省堂大辞林 第三版によると「体言止め」は次のように説明されています。
和歌・俳諧などで、句の最後を体言で終えること。言い切った形にしないために、余情・余韻をもたせることができる。「新古今集」に多く使われ、その特徴の一つとなっている。名詞止め。
出典:松村明 編 三省堂『大辞林 第三版(ISBN:978-4-385-13905-0)』
代表的な俳句を例にあげると、
といったところでしょうか?
日本人の誰もが知る松尾芭蕉の俳句ですが、名詞で終わらせることで「水の音」が強調され、読み手がイメージを膨らませることができます。
「水の音」がどうなっているのかを言葉にしなくても、その先を読み手に想像させることによって、余韻を加えることができるわけです。
ちなみに体言とは、活用のない「名詞」「代名詞」「数詞」のことです。
実際に体言止めを使った文章では、全体のバランスを考慮して一番強調したい場面で使用されています。
体言止めの基本的な使い方
体言止めの基本的な利用シーンを説明します。
「です・ます調」の文章で文末に「です」が続く際に、「です」の前の名詞で止めて名詞を強調したり、文章が単調に感じたときに体言止めでアクセントを入れたりします。
多くの記事を読んでみればわかるのですが、体言止めは「です・ます調」の文章よりも「だ・である調」の文章のほうが使われている傾向があります。
基本的な文体である「です・ます調」はコラムやブログに使われていて、「だ・である調」は新聞やニュース記事に利用されているので、読み比べてみてもおもしろいかもしれません。
何気なく読んでいるネットニュースなどにも体言止めは使われているので、普段から文体を意識して記事を読むようにしてみましょう。
それだけでも基本的な体言止めの使い方を学ぶことができるはずです。
体言止めを効果的に使う方法とは
三省堂『大辞林 第三版』の定義にあるように、体言止めは短歌や俳句に多く使われている表現方法で、体言止めで文章を切ることで、読み手の想像力をかきたてる効果があります。
効果的な使い方としては、体言止めを使って体言を強調したあと、その体言について解説を入れることでより理解を深めることができます。
例えば、
ディズニーランドは夢の国なので、ランドの中から現実世界であるランド外の高層ビルなどが見えない設計になっています。
この文章では、ディズニーランドが強調され、すぐあとに豆知識を入れることでよりディズニーランドへの興味関心を引くことができるわけです。
体言止めの基本的な利用シーンとして、文章が単調になったときのアクセント的な使い方ができると紹介しました。
体言止めを用いることで文章にリズム感をもたせることもできます。
体言止めをどのタイミングで入れるのか決まったルールはないので、まずは失敗を恐れずに記事をたくさん書いてみましょう。
書けば書くほどリズムのよい文章が自然に書けるようになり、体言止めの効果的な使い方もわかってきます。
下記の記事では、読みにくい文章を読みやすい文章に変えるテクニックについて解説しています。
体言止めを使うメリット・デメリット
文末に体言止めを使うことで、読み手に余韻を与えたり、体言を強調したりすることができると紹介してきました。
これらの効果に加え、体言止めを使うことには次のようなメリットや、気をつけておかなければならないデメリットがあります。
体言止めを使うメリット
体言止めのメリットは、文章を短くまとめられることがあげられます。
「だ・である調」が使われている新聞記事やニュースでは、限られた文字数の中により多くの情報を詰め込む必要があります。
体言止めを使うことで一つの情報をよりコンパクトに収めることができ、全体の文章を短くできるというわけです。
Yahoo!ニュースを見てみると、体言止めが多く使われているのがわかりますよね。
すでに紹介しましたが、体言止めを使うことで単調になりがちな文章を、リズムよく読める文章に変化させることができるのも一つのメリットといえるでしょう。
体言止めを使うデメリット
体言止めのデメリットとしては、文脈を意識せずに使ってしまうと、文章が軽く感じられたり、読み手に余分なストレスを与えたりします。
また、体言が強調される一方で、文章が途切れてつながりが悪くなったり、投げやりで品のない文章だと捉えられたりすることもあります。
料理におけるスパイスと一緒で、使いすぎに注意する必要があるということですね。
また、誰かが話している言葉を表現する「」(カギカッコ)の中の文に体言止めを使うことはできません。
ドラマのセリフなどならあるかもしれませんが、体言止めを話し言葉に使う人なんていませんよね。
商品のキャッチコピーとして体言止めを使うのはよくありますが、話し言葉のカッコの中に体言止めを使うことで、うそっぽさや安っぽさが感じられる文章になってしまいます。
記事を書く際には注意しておきたいポイントです。
「」(カギカッコ)など括弧の使い方を詳しく知りたい方には下記の記事がおすすめです。
まとめ
体言止めの基本的な使い方や効果的に使う方法、そのメリットとデメリットを紹介してきました。
体言止めに限らず、文末の表現が変わるだけで、記事の印象をガラッと変えることができます。
大切なのは、読み手に違和感やストレスを与えず、自然と脳が理解できるような文章を心がけることです。
読み手の脳が心地よいリズムを感じながら文章を読むことができていれば、読者はストレスなく最後まで記事を読んでくれるわけです。
しかし、文章を読んでいて少しでも違和感を抱いてしまうと、それがストレスになり記事から離脱してしまう原因になります。
体言止めは単調な文章から、リズムのある文章に変化させることができる重要なライティングテクニックです。
記事を書く上で必須とはいえないまでも、一味違った記事に仕上げるためには身につけたい表現であるといえます。
料理に隠し味を加えることで味がガラッと変わるように、体言止めを「ここぞ!」というところで使えば、引き締まった文章に仕上げることができます。
注意してほしいのは、読者になったつもりで文章をしっかりと読み返すことです。
読み返してみれば、違和感を覚えるところやストレスを感じるところが見えてくるので、修正しつつ文章を作り上げれば、スパイスの効いた読まれる文章に仕上げることができます。
ポイントがわかればあとは実践あるのみです。
失敗を恐れず、どんどん文章を書いてみましょう。
もし独学での学習が難しいと感じた場合、スクールを検討してみましょう。
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