この記事の要点
- IDE(統合開発環境)とは、ソフトウェア開発に必要なツールをまとめて提供してくれるソフトのこと
- それぞれのIDEに長所と短所がある
- 初心者の方には、準備が簡単で高機能なVisual Studio Communityがおすすめ
以前、C言語とはどんな言語なのか、またC言語が利用される業務について解説していました。
今回は、C言語の開発環境についてです。
IDE(統合開発環境)を使うと、C言語の開発環境を簡単に準備できます。
しかし、IDEには様々な種類があり、またそれぞれ異なる特徴を持っているため、初心者の方が選定するのは大変です。
当記事では、C言語でのおすすめIDEを5つに絞ってご紹介しています。
さらに、初心者の方におすすめのIDE「Visual Studio」について、詳しい準備手順を説明していますので、IDEの選択に迷っている方はぜひ参考にしてください。
目次
IDE(統合開発環境)とは
IDE(統合開発環境)とは、「Integrated Development Environment」の略で、ソフトウェア開発に必要なツールをまとめて提供してくれるソフトのことです。
IDEは様々な場面で面倒な作業を省いてくれます。
以下では、IDEの代表的な機能をご紹介します。
テキストエディタ
まず、IDEはテキストエディタとしての機能を持っています。
高機能なテキストエディタは、コーディングの効率アップにつながります。
プロジェクトやフォルダ内の検索や、最初の数文字を入力すると残りの文字を自動で補完してくれる機能、コーディングミスをコンパイル前に教えてくれる機能など、さまざまな便利機能が提供されています。
コンパイル
IDEでは、コーディング後にボタン1つでコンパイル、プログラム実行を行えます。
IDEを使わない場合、コンパイル、実行のたびに毎回コマンド入力が必要になり面倒です。
デバッグ
IDEは、最初からデバッグ環境が整っている点も便利です。
デバッグ機能があると、バグの原因特定や、プログラムの動きをじっくり観察することがより簡単になります。
特に業務規模のプログラム開発では必須の機能です。
【パターン別】開発ツールの選定基準
何を重視するかによって、選ぶ開発ツールは変わってきます。
なぜなら、万能のツールはなく、どのツールも一長一短だからです。
具体的に、開発ツールの選定基準をご紹介します。
ご自身が次に挙げるどのパターンに当てはまるか考えてみてください。
無料で利用できるか
IDEによっては、利用にお金がかかる場合があります。
現在は無料で利用できる優秀なIDEがいろいろ出ています。
しかし、例えば大規模プロジェクトで商用利用前提のプログラムを開発する際は、有料IDEのほうが適している場合もあります。
当記事では、無料で使えるIDEに絞ってご紹介しています。
自分が使っているPCで使えるか
IDEによっては、WindowsOSでしか使えないもの、MacOSでしか使えないものがあります。
また、IDEはファイルサイズが大きいので、PC内にある程度以上の空き容量が必要になります。
いくら高性能でも、自分のPCで動作しなければ意味がないので、自分のPCが利用可能条件を満たしているか調べておく必要があります。
実行環境が必要か
単にソースコードの中身を見たいだけの場合や、ネット上で提供されている実行環境を利用する場合など、自分のPCでプログラム実行しない場合、そもそもIDEは必要ないかもしれません。
IDEは高機能な代わりに、ファイルサイズが大きい、メモリ消費量が多い、動作が遅いといったデメリットがあります。
このような場合、素直にテキストエディタを利用することをおすすめします。
おすすめのIDE5選
C言語での開発におすすめのIDEを厳選して5つご紹介します。
それぞれの特徴についてもご説明しますので、どれが自分に合っているか検討してみましょう。
IDE | 利用料 | 使いやすさ | 機能性 | 動作 | 対応OS |
---|---|---|---|---|---|
Visual Studio | 無料(Communityのみ) | ◎ | ◎ | やや遅い | Windows |
Eclipse | 無料 | ◯ | ◯ | やや遅い | Windows Mac Linux |
Code::Blocks | 無料 | △ | ◎(C言語に特化) | やや早い | Windows Mac Linux |
Net Beans | 無料 | ◯ | △ | 普通 | Windows Mac Linux |
Visual Studio Code | 無料 | ◎ | ◯ | やや早い | Windows Mac Linux |
Visual Studio
Visual Studio(ビジュアルスタジオ)は、世界中で広く利用されている有名なIDEです。
高機能で使いやすく、初心者の方でも簡単に環境構築できる点が魅力です。
Community(個人向け)、Professional(中小企業向け)、Enterprise(大企業向け)の3バージョンがあり、このうち無料で使えるのはCommuniyだけです。
個人開発で使う分には、Communityでも十分高機能です。
ただし、MacOSでは利用できないのでご注意ください。
Eclipse
Eclipse(エクリプス)は、無料で利用できて高機能なIDEです。
元々はJavaの開発環境として作られたもので、Java用のプラグインが多数提供されています。
Javaの他にも、C言語、C++などを使った開発ができます。
Eclipseのメリットは、導入がとても簡単なことです。
また、利用者が多いので、使い方がわからなくても調べればすぐに情報が出てきます。
Code::Blocks
Code::Blocks(コードブロックス)は、CやC++での開発に特化したIDEです。
.hファイルと.cファイルを素早く切り替える機能など、C言語ならではの需要に応えています。
拡張性が高く、プラグインを導入することでより快適に利用できるのも魅力です。
ただし、やや扱いにくく、上級者向けのツールとなっています。
Net Beans
Net Beans(ネットビーンズ)は、オープンソースのIDEです。
Javaで使われることが多いIDEですが、C、C++、JavaScriptなどに対応しています。
日本語版が提供されており、プラグイン導入しなくても日本語で使えます。
プラグインは少ないですが、操作性はシンプルなので、他の高機能IDEが使いづらく感じた方は、Net Beansを試してみるとよいでしょう。
Visual Studio Code
Visual Studio Code(ビジュアルスタジオコード、以下VSCode)は、IDEではなくテキストエディタの一種です。
しかし、プラグインが非常に豊富で、駆使するとほとんどIDEと同様の機能を使えます。
C言語の場合も、コンパイル、実行、デバッグ全てVSCodeで完結できます。
マルチカーソル(複数箇所を同時編集する)など、テキストの編集機能が非常に優秀です。
非常に多くのプログラミング言語に対応しているのが魅力ですが、C言語のIDEとして見ると、やや初期準備が面倒です。
なお、名前は似ていますがVisual Studioとは別物なのでご注意ください。
初心者におすすめVisual Studioを使用した開発環境構築の手順
初心者の方には、導入が簡単で機能性も抜群のVisual Studioをおすすめします。
Visual Studioでは、以下の手順で開発環境を構築します。
Visual Studio Community のインストール
まずは、MicroSoftの公式からVisual Studio Communityの最新版をインストールします。
2022年10月現在の最新版は、「Visual Studio Community 2022」です。
インストーラーのダウンロードはこちらから行えます。
Visual Studioの公式ダウンロードページ
インストーラーを起動したら、「C++によるデスクトップ開発」にチェックを入れて、インストールを実行します。
すると、C言語での開発に必要なツールだけをまとめてインストールしてくれます。
Visual Studioのインストール完了後、実際にVisual Studioを起動してみましょう。
Microsoftアカウントへのサインインを求められた場合、ご自身のアカウントでサインインしてください。
もしアカウントを持っていない場合は、作成が必要です。
新しいプロジェクトを作成
Visual Studioを起動できたら、新しいプロジェクトを作成します。
このとき、「空のプロジェクト」を選択しましょう。
ソースファイルを作成
プロジェクト内にソースファイルを追加します。
「ソースファイル」を右クリックして、「追加」→「新しい項目」を選択します。
すると、このような画面が開くので、「C++ファイル(.cpp)」を選択します。
この時、拡張子を「.cpp」から「.c」に変更してください。
プログラムを作成、実行
もう実行環境は整っているので、試しに自由にプログラムを作成して実行してみましょう。
当記事では、次のようなプログラムを実行しました。
#include <stdio.h> int main(void) { puts("Hello World"); return 0; }
実行時は、画面上部の「ローカルWindowsデバッガー」というボタンを押します。
無事、コンソールに”Hello World”の文字を出力できました。
まとめ
当記事では、C言語でのおすすめIDEを5つご紹介しました。
IDEは、ものによって使用感や機能が異なります。
初心者の方に対してはVisual Studioをおすすめしていますが、もし使いづらく感じたら、他のIDEに乗り換えてみてもよいかもしれません。
いろいろと試してみて、自分に一番適したIDEを見つけることが大切です。
また、C言語初心者が学習中につまずきやすいのが「ポインタ」です。
初心者がポインタでつまずきがちな理由と、すっきり理解するためのコツを解説していますので、参考にしてください。
ポインタと混同されやすい配列についてもこちらで解説しています。